星と石ころ日記

神戸在住。風の吹くまま気の向くまま。

今夜君の部屋の窓に 星屑を降らせて音を立てるよ

二人の息子は保育園育ちだ。

二人とも生後6ヶ月から長い時間を保育園で過ごしてきた。朝7時から夜7時までの延長保育。今みたいに働く母親に理解のある時代じゃなかったから、いろいろ言われたよ。

 「こんな小さい子なのにかわいそう」「せめて3歳までは一緒にいたら?」「そんなに生活苦しいの?」 なんと言われても大丈夫。自分がまっすぐなら平気だった。でも、一度だけ泣いたことがある。

 

いつものように一番最後に保育園にお迎えに行ったある日。7時前まで残っている子どもは二組なので保母さんもひとりしかいないのに、その日は2−3人の保母さんと園長先生まで残っていた。理由を聞くと、この保育園を卒園して今小学2年の男の子が行方不明。どうやら家出をした様子で、小学校から保育園に姿を見せるかもしれないと連絡があり、みんなで周辺を探しているとのこと。 園長先生は年配の女の人で、心労のためか顔色も悪い。

目が合ったので、「先生大変ですね」と声をかけようとした矢先、「いつもいつもこんな遅くまで預けて!あんたのとこの子も、絶対ぐれてこんなになるわよ!」と冷たい言葉を浴びせられた。 

次男を抱っこし長男の手を引いていた私は、何も言い返せずおじぎをして保育園の門を出た。普段は優しい園長先生の言葉が子どもに聞こえていなかったのか、子どもたちはいつものように空を見上げて星を数えながら帰った。

子どもが寝静まってから、初めて涙がこみ上げてきた。 言われた言葉が悔しいのか、言い返せない自分に腹が立つのか。自分でも不安に思っていたことを言われて動揺したのか、子どもの前で言われてショックなのか。わずか7歳の子どもが、暗い夜にひとりぼっちでどこかにいることの切なさなのか。 涙の理由はどれだろう。多分全部だ。

 

あの日から少し強くなれたと思う。それみたことかと笑われないように、仕事もやめないぞ、子どもも一生懸命育てるぞって。 結果は、まあいろいろ不満もあるけど、二人とも他人の痛みのわかる子に育ってくれたと思う・・・多分。(親バカ?)でもそれだけで十分。

 

園長先生が、若い頃離婚して、ひとり息子を人に預けて、それでも保育の道を歩んできた人で、今息子さんとうまくいっていないことをあとで知った。

 

先生、先生は自分の言った言葉で、きっと私以上に傷ついたんだね。 今となっては感謝しているよ。

生きていくって切ないね。

星を数えながら帰ったことも今では懐かしく。

次男の中学校卒業を前に、春を待ちながら思い出す。

 

Rinko

〈今日のBGM〉 Sign鬼束ちひろ