歌は世につれ
「歌は世につれ 世は歌につれ」って誰が言い出した言葉だろう。
二日酔いの朝はアコースティックな静かな曲を聴こうと、借りていた『Folk Village VOL.4』をまだ聴いていないことを思い出して聴き始めたのがまちがいだった。
もともとこのアルバムは、高田渡さんというフォークシンガーの訃報を聞いて当時の歌を懐かしく思い借りたのだった。高田さんの曲が入っているアルバムが二日酔いに聞くわけがない。
わたしがはっきり音楽を音楽として意識し始めたのは、井上陽水、吉田拓郎、かぐや姫という歌い手さんたちの初期の頃なので、このアルバムに入っている高田渡、五つの赤い風船、六文銭、という人たちが活躍されていた頃はもう少し古い時代で、わずかな記憶しかない。けれどこども心に、「なんかすごい歌」と思った覚えがある。
この『Folk Village VOL.4』には1968年〜1973年の歌が収録されている。
わずか6年間であるが、その間に歌の様相が移り変わっている。
“ああ この広き国 日の本に
名高きものは 富士の山
加えて名高き えぬ・えち・けい
多くの者に絵を送り 月々戸口にあらわれて
とりたて歩くは絵の代金”
(「NHKに捧げる歌」早川義夫)
“命はひとつ 人生は1回
だから命を すてないようにネ
あわてると つい フラフラと
御国のためなのと言われるとネ
青くなって しりごみなさい
にげなさい かくれなさい”
(「教訓 〓」加川良)
「主婦のブルース」「腰まで泥まみれ」中川五郎
「受験生ブルース」高石友也
前半は、風刺、揶揄、反戦の歌・・・・と、外に向けて発信する歌が多い。
それがこの時期の後半になると、自分の内に向ける歌や「キミとボク」や日常の歌が多くなる。
“俺のあん娘はたばこが好きで いつもプカプカプカ
からだに悪いからやめなって言っても いつもプカプカプカ
遠い空から降ってくるっていう 幸せってやつが
あたいにわかるまで
あたいたばこやめないわ プカプカ プカプカプカ”
(「プカプカ」ザ・ディラン〓)
“君はひとりじゃいられなかったし
ぼくもふたりじゃいられなくて”
(「もう春だね」友部正人)
この変わりようは、世の中が平和になったから?
それとも歌で世界は変えられないと気づいてしまった時代なのか。
それはきっと聞く人たちも変わっていったんだろう。その時代に受け入れられた歌だけが生き残っている。
たとえその時代を生きていなくても、歌を聞くだけで思い描かれるような、そんな歌に今わたしたちは出会えているだろうか。
今日の1曲:血まみれの鳩/五つの赤い風船
コメント プレイバック
1.商業音楽に本来の日本的なフォークが薄められた、と取れなくもないですね。昔のフォークソングは社会風刺の色合いが濃いものや反戦歌が大勢を占めていて、それが受け入れられていたという事は時代が時代なだけに全体としてそのような曲を求める意識も高かったのでは。60年代後期と言えばアジアの某国では悲惨な戦争があったわけで、世界的に“反戦・平和”の大きなうねりがあったような。それにしてもすごい歌詞ですね。
Posted by waki at 2005年04月24日 10:42
2.そうなんですよ!こどもの頃にはこのすごさに気づきませんでした(笑)放送禁止と紙一重、の曲ばっかりです。「自衛隊に入ろう」は、PRソングかと思ったら反戦歌だったので、防衛庁もあてがはずれた、という記事がありました。最後まで「入ろう入ろう」って調子なんですけどね。
Posted by Rinko at 2005年04月24日 11:16