どうして学生時代、あんなに旅をしていたんだろう。まるで何かにとり付かれたようだった。
2日休みがあれば列車に飛び乗った。バイトしてはお金を貯めて、長期休暇には北海道や九州に行っていた。
目的地に着いて遊ぶより、着くまでの列車の中が好きだった。今ではほとんどなくなってしまった、長距離急行列車。
とくに好きだったのは、大阪発青森行き、急行「きたぐに」。大阪を夜10時ごろ発車して、早朝青森に着く。お金がないから寝台車になんか乗らないの。夜にはボックス席でからだを折りたたんで眠る。
後ろに流れ去っていく景色も、陽が沈むと闇になる。窓ガラスに天井の灯りが反射して、外が見えなくなる。
ガラスに顔をぴったりつけて目を細めると、闇の中に光が見える。あれは街の灯?港の船の灯り?
耳を澄ますと闇の中から、誰かの声が聞こえる気がする。わたしを呼ぶ声。
どこかにどこかにいるのだろうか。
言葉や飾りを身につけなくても
わたしを見つけてくれるひと。
わたしの心の片割れが。
そんなことを思いながら、闇の中の声を聞いた。寂しさと友達だった若い頃。
今夜のように欠けた月を見ると、あの頃のことを思い出す。
今のわたし、欠けた部分はもう見つかった?
闇の中から聞こえてくる、あの声はあなたの声?
それともわたしが誰かを呼ぶ声?
寂しくて寂しくて、6月なのに凍えそうなんだ。
今日の1曲:Sonata/100s