星と石ころ日記

神戸在住。風の吹くまま気の向くまま。

 矢野顕子リサイタル BREEZE 3Days with GUEST@サンケイホールブリーゼ(2/14)

ゲスト:細美武士


初めて観るホールでのリサイタル。

友人に、“春先小紅”の頃しか知らないアッコちゃんこと矢野顕子さんのリサイタルに誘われて、「行きます!」と返事をしたのはゲストが「細美武士」と聞いたから。(矢野さんファンの方、ごめんなさい)


でも、初めてナマで観た矢野顕子さんは生き生きとして、本当に素敵だった。

ライブでゲストに呼んだり呼ばれたりされているのは、音楽性もさることながら彼女の人間性によるところが大きいのだろうな、と思った。


そして細美くん。

エルレが休止する話が出てからはついにライブに行けず、2007年10月のライブが最後になってしまって、ずーっとモヤモヤしていた。


新しく結成するらしいバンドの話題も出てきて、モヤモヤはますます広がっていた。


だから、「ゲスト:細美武士」に飛びついてしまったわけです。


この話が持ち上がってから、「どう捉えたらいいかわからんってメッセージをいくつかもらいました」と細美くんがブログに書かれていたけど、なんで?

何か不満(不安か?)な人がいるのだろうか。

矢野顕子さんは細美くんにとって、「すごく身近な大親友であり、姉ちゃんであり、お母さんであり。」

「ニューヨークから手書きの手紙を送ってくれる」

と、以前某雑誌で話しておられた。


そんな矢野さんが、「今度コンサートあるんだけど何か一緒にやらない?」と声をかけてくださって、今回のゲスト出演が決まったそうで、「どう捉えたらいいかわからん」って、どう捉えたらいいのん?(笑)


なんて思いながら、なぜかやたら緊張して今日を迎えたのでした。



(下にセットリストあります)







今日のリサイタルは、サンケイホールブリーゼの開場記念だそうだ。

ビルの7階がホールの1階、8階が2階。

だから、7階がホールの入り口だと思ってエレベーターを降りても、2階席のお客さんはもう一度エレベーターに乗って8階に行かないといけないようだ。


ホールロビーの壁は真っ白、ホールの中は真っ黒。


2階の傾斜が大きいようで、矢野さんも始まるなり「2階の人、大丈夫?かなり急だね。万一落っこちたら、下の人、受け止めてあげてね」と言われていた。


わたしと友人は1階のJ列(前から10列目)の右端。

ステージ真ん中にでーんと置かれたピアノを弾く矢野さんの顔がバッチリ見える位置。


何度も矢野さんのコンサートを観ている友人に聞くと、いつも衣装が華やかだったり凝っていたりするらしい。それを見るのも楽しみ。




開演のブザーが鳴ってアナウンスが入るあたり、さすが「リサイタル」という感じで新鮮だった。


会場の明かりが消えたら大きな拍手が起こり、再びステージにライトが点り、矢野顕子さん登場。


ノースリーブの黒っぽいラメ入りブラウスにパンツスタイル。

颯爽としていて想像していたよりカジュアル。

ゲストの細美くんに合わせたのかな?と思った。



<セットリスト>



01.PRESTO
02.ニューヨーク・コンフィデンシャル
03.へびのなく夜
04.Evacuation Plan
05.My Love
06.右手(ELLEGARDEN カバー)

〜/w 細美武士

07.Say It Ain't So(Weezer カバー)
08.When I Die
09.Odyssey(細美武士 新曲)

〜細美くん退場〜


10.変わるし
11.すばらしい日々
12.Rose Garden


En

〜/w 細美武士

01.やさぐれLOVE (仮)




(写真はいただきものです。ありがとうございます)


1曲めから5曲めまではMCを交えながら矢野さんのピアノの弾き語り。



2曲歌ってから、

「ここに楽譜があります。どの曲をやるか、さっき決めました(笑)

どの曲をやるのか、照明さんも誰も知りません。

・・・わたしだけが知っています。でもよく気が変わるんです」(笑)




“へびのなく夜”はタイトルを聞いてギョッとしたけど、きれいな曲だった。

糸井重里さんの作詞だそうで、今は作詞をやっておられない糸井さんに詞を作ってもらっているので「わたし専属(笑)」と。



で、その次だったか、イントロを弾き始められたけど、「さっきとキーが一緒だからやめよう」と曲を変更。

軽やかに自由自在(笑)





「昨日は岡林信康さんがゲストでした」と前日のライブの話を。

“チューリップのアップリケ”もやったそうで、この曲を今まで誰かと歌ったことがない岡林さんが矢野さんとセッションされて、「(今まで曲が)ひとりぼっちだったのが友達ができたみたい」と言われたそうだ。


ゲストの話になったので、もうすぐ細美くんが出てくるのかな?とドキドキしてきた。





そして6曲め、それまでと同じようにピアノをポロンと弾いて、語るように歌いながら始まった曲は・・・・


 誰がいいだとか 誰が悪いとか 興味すらないよ



うん?


 争いのわけや 勝利の行方 
 僕が知りたいのは そんな大それたことじゃなくて



これは・・・・


 僕らの両手はどこまで伸ばせば 
 誰かに触れるかって



“右手”だ!!!


と、気づいた瞬間、涙がこみ上げてきた。

なんで泣くの?


あちこちですすり泣く声が聞こえてきた。


 僕らの右手はどこまで上げれば 
 誰かに見えるかって それだけ




矢野さんの歌う“右手”に、流れる涙が止められない。

とうとう最後まで泣きながら聴いた。


ライトが明るくなって、足元に置いたバックから慌ててハンカチを取ろうとしたら矢野さんが、


「この素晴らしい曲を生んだ、細美武士さんです!」

と紹介されたのでステージから目が離せなくてなかなかハンカチが取り出せない。
だってまさか自分が今日泣くなんて思ってなかったもの。



細美くんはグレイっぽいVネックのTシャツにジーンズ、裸足だった。

あれ?ちょっとふっくらしてる?と思ったけど、細美くんを見るのが久しぶりすぎて定かではない。


ピアノの右に置いてあったアンプの前に椅子が用意され、その横にアコギとエレキギターが立てられた。



ステージ左から登場した細美くん、ちょっと照れくさそうにお客さんにお辞儀して、矢野さんの前を通ってピアノの横の椅子に着席。


細美くん、緊張感背負ってるよ(笑)

見ているわたしも緊張、なんでやねん。



そのあとすぐに曲には入らずふたりのMCが。


お客さんの前で歌うのが約半年ぶりくらいでかなり緊張しているそうで、



細美「なんでこのオファー、受けてしまったんだろう、と思って・・・・待っているとき、歯医者の待合室にいるみたいで・・・いや、それだと楽しいことがないから違うかな?」


矢野「ご褒美にあとでアイスを食べるとか?」


細美「・・・小学生ですか!?」(笑)



細美「早く始まってほしいような、始まったら終わっちゃうから始まらないほうがいいような。

終わっちゃうと矢野さんと歌うことなんて二度とないだろうし・・・」

矢野「じゃあ、また!」


まだ何もやってないのにもう終わったみたいな会話だね、とふたりで笑い合って、お客さんも笑って。


細美「歌ったほうが落ち着くと思います」

矢野「じゃあ、歌でも歌いますか」


と、“Say It Ain't So”をふたりで。細美くんはアコギを弾きながら。



ふたりともWeezerが好きなので、彼らの曲をやりたいね、ってニューヨークと東京で電話で話したそうだ。

それでふたりがそれぞれやりたい曲をつき合わせてかぶった曲をやることになったと。




細美「矢野さんのMC聞いていると、何があっても何とかなるな〜と」(笑)


矢野「え?取り返しのつかないことなんてないから。いや、やっちゃった〜って思っても、自分でまあ、いいか!と思えたらOK?」(笑)


矢野「(唐突に)この前TVを見ていたら八代亜紀さんが女子刑務所を慰問されててね」

細美「はい」


矢野「みんなで、“ウサギ追ーいし かの山〜♪”とか歌ってね。

そのあと1対1で話をするシーンがあったの」


細美「はい」


矢野「もうすぐ出所できる人はいいんだけど、“私はもう一生出れないから”という人もいて、八代さんが“まあ、何をされたの?”って優しく尋ねられたのね。

そしたら、“強盗殺人です。無期です”って。

これは“取り返しのつかないこと”よね?(笑)

(細美くんに)まだ、それはやってないでしょ?」


細美「(笑いながら)まだやってないです」(爆)



矢野さんの長いたとえ話にずっこけた(笑)





矢野「“右手”、あまりライブでやらなかったよね?」


細美「やりませんでしたね。“それだけ〜♪”のところが恥ずかしくて」(笑)


矢野「自分で作ったのに!?」(笑)








矢野「(細美くんに)後ろは振り返らない、前だけ見るのよね?“右手”はわたしが歌いたくて勝手に歌ったけど」


今日はエルレの曲はやらないってことかな?


そう矢野さんに言われた細美くん、

「でも引きずっています」


と答えられた。切なくなった。




それでも、

「これはチャンスだから。矢野さんと同じステージに立てることも。

ヴォーカリストとして今はいろんなことを経験したい」

と。



細美くんは3月くらいからアルバム製作に入るそうだ。

いつ頃発売かはまだ言えないようだったけど、お客さんから「待ってますよー!」と言われて「ありがとう!」と。



「今からやる曲はアルバムに入れるかどうかはわからなくて、はみ出しているかもしれないけど、入ったら“あ、あの曲だ”と思い出してください」

と。

いろいろ事情があるのだろうけど歯切れが悪い話し方だったので、

「僕、切れ味悪いんです」(笑)


そして、楽器を持たずにスタンドマイクでピアノの伴奏で歌われた曲は、英語の歌詞でとてもきれいなメロデイだった。

やっぱり細美くんの声が好きだ。


堂々とした歌いっぷりに、ああ、細美くんは新しいスタートを切ったんだな、と思った。



大きな拍手に送られて細美くん退場。

矢野さんと握手したあとステージ袖からは小走りで楽屋へ。

終わってほっとした感があふれていた(笑)




そのあとまた矢野さんひとりに戻って歌われた、“変わるし”がめっちゃよかった。ちゃんと音源聴いてみたい。





アンコール。

もう一度ふたりで、手を繋いで登場。大きな拍手。


初めてふたりで作ったという曲を披露してくれた。

細美くんにとっても初めての共作、初めてのラブソングとか。



タイトルはまだ無いけど、仮タイトルを発表してくれた。

“やさぐれLOVE”


細美くんは“やさぐれらぶ”と全部ひらがながよかったそうだけど、矢野さんの「やさぐれがひらがなで、らぶはローマ字の大文字、後ろにハートマーク」という意見にみんなで拍手して、そちらに決定(笑)


(このブログはハートマークが出せないので、上のセトリの写真参照してください)


そんなタイトルで、実際「やさぐれて〜」って歌詞もあったけど、とても素敵なラブソングだった。

細美くんの高い声が生きていた。



最後にふたり繋いだ手を掲げてお客さんにご挨拶。

もう一度アンコールの拍手をしたかったけど、ふたりで退場して終わり、でいいかなと思った。



矢野さんの歌声も素晴らしかったけど、細美くんを温かく見守るような雰囲気が素敵で、温かいもので胸がいっぱいになった。


またいつかふたりで共演して、“やさぐれLOVE (仮)”を歌ってほしい。

この日限りで聴けなくなるのはもったいない曲だから。





矢野さんの(ヤノカミの)グッズがあまりにかわいかったので、買ってしまった。



“右手”が聴けて、幸せだった。