長年看護師をしていても、実生活ではあまり役に立たない。
子どもが熱を出したらオロオロするし、無理やり解熱剤の坐薬を入れて、保育園に預けて仕事に行ったりする。
自分の親に相談を受けても答えに困ることもある。
数年前、私の祖母は96歳で亡くなった。最後の6年間は寝たきりで母が介護をしていた。
いよいよ食事が入らなくなり、往診の医師が1日1回点滴をしにきてくれていたが、だんだん血管が出なくなり何回も針を刺すので、本人の苦痛が強くなった。それで医師から、このまま点滴を続けるか、やめるかを考えてほしい、こちらは希望どおりにさせてもらうから、と話があった。
これ以上痛いことをするのはかわいそうだ。でも点滴をやめると明日にも死んでしまうかもしれない・・・
悩んだ末母は、実家を離れている私に相談してきた。
「お母さんがずっと世話してきたんやから、思うようにしたらいいよ」と言おうとして口をつぐんだ。だってそれじゃあ、第三者である医師と同じだ。。母は私に、看護師としての意見を求めているのか、娘としての意見を求めているのか。命に関わるかもしれない選択をするのは怖い。母にまかせてしまうのは逃げているのと同じだ。
そのあと母とたくさん話をした。自分が祖母だったら痛いことをされるのは嫌だ。でももし点滴をやめたあと亡くなったら、母はきっと後悔するだろう。もう少し続けていたらもっと生きられたかもしれないと一生思い続けるかもしれない。
結局今までどおり点滴を続けてもらった3日後、祖母は息をひきとった。
私たちの考えが正しかったかどうかはわからない。
でも、「死」は死んでいく人ひとりのものではなく、生き残った人のものでもあるんだ。だからそのあとを継いで、生きていく人の気持ちを大切にしたい。命の重みをしっかり受けとめて私たちは生きていくんだ。
おばあちゃん、最期まで痛い思いをさせてごめんね。
あなたのことを忘れず、がんばって生きていくからかんにんね。
〈今日のBGM〉 ハピネス/syrup16g
写真:HP 「季節の花300」より 白木蓮 http://www.hana300.com