星と石ころ日記

神戸在住。風の吹くまま気の向くまま。

 夕焼けの思い出


某サイトの掲示板に夕焼けのスレが立っている。夕焼けといえばちょっと苦い思い出がある。

 

ふたりの息子がまだ保育園に通っていた頃。 仕事を終えていつものように駆け足で保育園にお迎えに行き、マンションまで30分かけて歩いて帰った夏の日。

ここからが戦争。洗濯物を取り込み、お風呂を洗って、食事の支度して、明日の準備をして、今日の洗濯をして・・・・と頭のなかでスケジュールはできあがるけど、疲れた身体にムチを入れないと動けない。気ばかり焦る時間。

 

そんなとき、玄関先でふたりの大声が聞こえた。

「お母さん!見て!きれいな夕焼け!!」

わたしを呼ぶこどもたちに「早く中にはいりなさい!」と大声で言ってしまった。

 

もう10年以上も前の話。このときのことが今でも忘れられずに、夕焼けを見るたびに思い出す。かわいそうなことしちゃったな。せっかくわたしにもきれいな夕焼けを見せてあげようと呼んでくれたのにって後悔する。だいたい親って、こどもに「こんな人になってほしい」とか「こんな心を忘れないでほしい」とか思いながら、自分はいい加減なことしてごまかすんだ。

 

 

ある日古い雑誌の中に、ジャパンの編集長を辞められる鹿野さんにあてた藤くん(バンプ・オブ・チキン)の肉筆の手紙が掲載されている記事をみつけた。

“・・・・昨日の昼下がりに川沿いの桜並木を散歩しました。そして世の中には本当に綺麗なものがあると知りました。でもこの場合「綺麗と感じる心が俺の中にあったと知りました」が正しいと思いました。・・・同感です。俺も音楽は素晴らしいと感じます。「素晴らしいと感じる心」少なくとも俺が俺であるために、あなたがあなたであるために必要なアイテムだと思います。・・・・”(抜粋)

 

眼が覚めた。あの日の、見れなかった夕焼け、「かわいそう」だったのはこどもたちじゃない。本当にかわいそうなのは、そんなきれいなものを見つけたこどもに共感できなかったわたしだ。目先のことに心を奪われて、素晴らしいと感じる心を失くしていたわたしのほうだった。

 

今さら後悔しても、あの日と同じ夕焼けはもうどこにもない。

 

こどもたちも忘れちゃっているだろうな。でも、「素晴らしいと感じる心」をいつまでも持っていて、「この素晴らしさを誰かに伝えたい」と思えるひとでいてほしい。

 

わたしもそんなひとで、歳を取っていきたい。

 

 

 

今日の1曲:リトルブレイバー/BUMP OF CHICKEN


コメント プレイバック

1.「大切なのは、感じる心」
そうですね!お子さんに大声で言ってしまった時、きっとRinkoさんもそれを持っていたと思います。でも私もそんな状況なら、感じられないだろうと思います。そしてそのことを後で後悔するでしょう。
でもそれも自分なんだと、しばらく前に気付きました。些細なことに感動して、でも余裕がなければそれも感じられない、そしてその一瞬を忘れていくんです。でもその忘れた自分というのも存在していて、いろんな感情を持つのが紛れもない自分なので、全て認めざるをえないという感じです。そんな感じで今は、いろんな失敗や後悔をしても、恥をかいても割と前向きです。・・・何が言いたいのか伝わらないかもしれませんけど(自分でもよくわかんなくなってきました・・)、Rinkoさんはちゃんと大切なことに気付けたんですから、よかったと思います。世界中の人がそういう気持ちを持てたらいいのに・・・と思いました。長文失礼しました。
Posted by てん at 2005年05月02日 22:45


2.てんさん>コメントありがとうございます。
なんとなくわかります。どんな自分も認めてやれってことですかね。一番悪いのは自分を否定してしまうことですね。
Posted by Rinko at 2005年05月03日 00:09


3.とても感動した記事でした。見られなかったのは残念ですが、その分これから見ていく夕日の価値は上がっていくと思いますよ、Rinkoさんの心の中で。
Posted by perakyon at 2005年05月03日 19:51


4.perakyonさん>ありがとうございます。そういうふうに考えられたら、とても素敵だなあと思いました。本当に。
Posted by Rinko at 2005年05月05日 20:58