涙で濡れたキミの頬
仕事が終わって10階から下へ向かうエレベーターに乗っていた。
途中から乗ってきた親子連れ。
お父さんと5歳くらいの女の子。
入院中のお母さんのところに面会にきた帰りのようで
お母さんが「気をつけてね」とエレベーターを見送っている。
お母さんに向かって笑顔で手を振る女の子。
「ばいば〜い、またくるよ」
エレベーターの扉が閉まったとたん、女の子の顔がくしゃくしゃになった。
「うわ〜ん、ママ〜!」
お父さんの足にしがみついて泣き出した女の子。
お母さんに心配かけちゃいけないと、無理して笑っていたんだね。
それに気づいたとたん、まぶたの奥が熱くなり
思わず下を向いた。
そのちっちゃなからだの中に
いろんな想いが詰まっているんだね。
誰かを想って落とす涙は
こんなに綺麗なものだったんだね。
とっくの昔に忘れていたよ。
わたしのほうが幼く見えて
恥ずかしくなって
ずっと下を向いていた。