星と石ころ日記

神戸在住。風の吹くまま気の向くまま。

 償う

高校3年の長男が、「進路が決まったら、車の免許を取りに行きたい。」と言っている。

いまどき免許なくちゃ困るわね。まあ、しょうがない。また心配のタネが増えるけど。
 
 
以前救急病棟に勤務していたとき、車にはねられた小学生の女の子が運ばれてきた。一命は取り留めたものの、意識が戻らず人工呼吸器をつけての入院となった。
 
入院された数日後、加害者(若い男性)のご両親が、面会に来られた。
 
「何しに来た!お見舞いなんかいらないからあの子を元に戻して!!」と、女の子の母親は泣きながらその両親に罵声を浴びせた。
 
「申し訳ありません!」
ふたりは床に手をつき、いつまでも土下座をされていた。
 
 
 
知り合いのおじさんから聞かされた話。
「自分はいい会社に勤めてエリートと呼ばれていたけど、ある日運転していて人をはねてしまったんや。それ以来、2度とハンドルは握らずに、会社もやめて、いろんな仕事をしてきた。本当にまっさかさまに堕ちたわ。」
 
 
 

さだまさしさんの古い歌に「償い」という歌がある。
 
友人のゆうちゃんは、毎月薄い給料袋の封も切らずに郵便局に飛び込んでいく。彼は昔雨の夜、配達帰りに横断歩道を歩いている人をはねてしまったのだ。
 
「人殺し!あんたを許さない!」と被害者の奥さんにののしられて彼は、泣きながら床に頭をこすりつけるしかなかった。それ以来人が変わったように働き続けて、償いきれるはずもないがせめてと、毎月奥さんに仕送りを続けているのだ。
 
“今日ゆうちゃんが、僕の部屋へ泣きながら走りこんできた
しゃくりあげながら彼は一通の手紙を抱きしめていた
それは事件から数えてようやく七年めに初めて
あの奥さんから初めて彼宛に届いた便り
 
「ありがとうあなたの優しい気持ちはとてもよくわかりました
だからどうぞ送金はやめてください
あなたの文字を見るたびに主人を思い出して辛いのです
あなたの気持ちはわかるけどそれよりどうかもうあなたご自身の
人生をもとに戻してあげてほしい」”
 
 
わたしは時々、この歌を聞いて自分を戒める。
 
今隣で笑っているあなたやわたしが、ほんの一瞬の出来事で、加害者にも被害者にもなる恐ろしさ。
 
 
息子が免許を取るときに、この歌を、この話を聞かせてやろう。
これは現実の出来事だと。
 
 
あなたもわたしも、「償う」という言葉と無縁の人生が送れますように。
 



コメント プレイバック

1.さだまさしさんの本紹介したと思ったらこっちでも曲が(笑)彼の曲は母親が好きだったんです。…って過去形じゃもう死んだみたいですね。一応まだなんとか生きてます。 詩が本当にいいですよね。BUMPとかとはまた違った味があって。人生まだたいして生きてない自分が言うのも変ですが。
Posted by ks at 2005年06月28日 18:31


2.その歌、知ってますよ!
ちゃんと聞いたことはないのですが、前にテレビで、愉快犯のようにして人を殺した少年達(事件は忘れちゃったし記憶はかなり曖昧なのですが)に法廷で、裁判官が「この歌を聞いたことがあるか」と言った・・・それが「償い」でした。
もう5年位前になるかと思うのですが記憶薄れてもその歌の内容は忘れられないです。

自分に悪意はないのに人を殺めてしまうこともあって、それはものすごく重いことなんだなあ・・・みたいなことを思った記憶があります。
ちなみに私は車の免許は取りません・・・取れません。
Posted by ちこ at 2005年06月28日 18:48


3.こんばんは、時々拝見させてもらっていました。
この歌詞、本当に身近に起こりえることで、とっても怖かった記憶があります。
わたしは中型免許を持っていて、北海道は利尻まで行きましたが
街乗りは歩行者が多くて避けていました。

免許を取って路上に出るっていうのは、そんな危険が必ず伴うものだから
どんなに気をつけていても、相手の人生も自分の人生も奪ってしまう「運命」に翻弄される確率が上がってしまう。
だからこそ、時に起こってしまうやもしれない窮地を想像出来るこの歌は、沁みると思います。
Posted by Mo45 at 2005年06月28日 19:26


4.さだまさしファンの自分としては、「償い」は何というのでしょうか・・・
襟をピシッと正して正座をして聴くべき曲だと受け止めています。
私は、交通事故の被害者になったことがあります。小学生のときの話です。
この歌を聴いたときに、あのときの加害者の方がどんな思いをされたのか、少し解ったような気がしました。
免許を取ってかなり経ちますが、Rinkoさんがおっしゃるように、「償う」ということと無縁の生活を送れるように、一人ひとりが気をつけて行かなければと思います。
Posted by しゅんじ at 2005年06月28日 21:12


5.Ksさん>Ksさんのブログを見ていると、バイオリズムが同じなのかなと思うときがあります(笑)。さださんの本について書かれていたのにはびっくりしました。

ちこさん>その裁判官の話は新聞で読んだ記憶があります。わたしもどんくさいので免許は取ったものの、一生ペーパードライバーで終わるつもりでした。でも子どもが病気をしたときにどうしても必要になりました。今では車のない生活は考えられません。

Mo45さん>はじめまして。ありがとうございます。運転する人みんながその危険性をわかっていれば、事故も激減するでしょうにね。

しゅんじさん>ブログのほうでも取り上げてくださってありがとうございます。被害者になられたときの恐怖心は一生消えないのでしょうね。思い出させてしまってごめんなさい。
Posted by Rinko at 2005年06月29日 22:03


6.Rinkoさん、そんな謝っていただかなくても・・・ 確かに事故や入院生活は辛かったですが、そのおかげで今の自分が在ると思ってます。自分の経験を述べることで、一人でも多くの方が運転に気をつけていただき、事故が少なくなればこれほど嬉しいことはありません。 なんだかRinkoさんに、気を遣わせちゃったみたいで、申し訳ありませんでした。
Posted by しゅんじ at 2005年06月30日 01:24